「日本のコミケのここがスゴイ!」 フランス人編集者が夏コミに潜入してみた

「日本のコミケのここがスゴイ!」 フランス人編集者が夏コミに潜入してみた

ボンジュール!フランスの漫画出版社Ki-oon (キューン) の東京オフィス代表のキムです。

去年の秋に東京での仕事を開始し、今年は初めて夏のコミックマーケットに行きました。

 

夏コミについては色々噂を聞いていました。

汗の雲ができるとか、熱中症で倒れて救急車で運び出された来場者が毎年何人もいるとか、何時間も猛暑の中で並ぶので、入場した時点でライフポイントがリミット状態になっているとか……もう、生きて帰れる気がしませんでした。

 

でも、仕事は仕事です。新人作家発掘のために行くべし。

 

「ま、がんばってきたまえ !」と、社長の最後の励ましの言葉を胸に潜め、登山の時と同じくらいの心構えで向かいました。

 

 

たくさんのお客さんを誘導する仕組み……フランス人に見習ってほしい!

初コミケは驚きの連発でした。なんという規模のイベントですこと!

 

10年も漫画業界に携わってきましたが、ヨーロッパには比較できるイベントがなかなかありません。一番近いものといえば、フランスで2000年から毎年開催されている『ジャパン・エキスポ』くらいかな。去年は25万人が4日間で集まってきて、新記録を達成しました!

 

フランスではそれだけですごい人数だと考えられているのに、コミケの入場者数は53万人、その倍以上です !入場無料といえども、大したものです。

 

また、こんな大勢の人をこれほどスムーズに会場へ入場させる仕組みは素晴らしいの一言見事です。アンビリバボーです。フランス人に見習ってほしいです!

 

ボランティアの方の誘導も上手いし、一般参加者の協力的な姿勢もすごいです。泣けます。

 

日本人が真面目すぎるとよく言われていますが、そういう時は真面目すぎるくらいでちょうどいいと思います。普通、たくさんの人たちをひとつの会場に入れようとすると、混乱が起きて負傷者が出るに違いありません。それなのに、そういった問題は起きないのです。さすが日本と思いました!

フランス

会場内の並び方も賢い!

 

商業の有名作家がポツンと立っている?!

いざ入ったら、サークルの数に圧倒されます。なんと34000ものサークルが並んでいます!

 

ジャパンエキスポにも同人誌販売コーナーがありますが、全体のほんの一部ですし、奥の方に設置されがちです。どちらかというと、出版社とプロの漫画家が注目されているコンベンションです。しかし、コミケのスーパースターは壁サークルですよね。商業本を出している有名な漫画家さんもいらっしゃいますが、そういうブースに人が集まってくるわけではありません。私の大好きな作家さんのブースに誰も並んでいなかったことにびっくりしました!

フランス

猛暑の中で壁サークルのブースの前で並んでいるファン達の強さに感心しました。

 

しかも、全体的に画力レベルが高いですよね。この国には絵が描ける人がこんなにいるのですね。日本の大財産です。話が作れるかどうかは別として、とにかく絵に対する向上心と熱心さが肌で感じ取れます。

 

そして、来場者もかなり熱心です!ジャパン・エキスポでもサインをもらうために走り出す一部のファンもいますが、全体的にはお祭のように家族や友達同士で話しながら、ぶらぶらしてゆっくりブースを見回るような感じの雰囲気です。

 

コミケには、ぶらぶら感があまりありません……押し合いというか、戦いというか、進むのが大変です。私も皆さんに負けないように結構必死でした!その時は弊社の社長のように190センチくらいあればいいのにと思いました。背が低いと埋もれますよね……。

 二次創作に寛容な国

こんなに人が多いのに、奇跡的に会場でフランス人の知り合いにばったり会いました。彼からも驚きの声が上がりました。「なんでエロ本がそんなに多い?!しかも二次創作の!」って。まーエロに飢えている人間が多いから売れるとしか言いようがないですかね。

 

正直私も説明してもらいたいところですが……それはさて置き、グレーゾーンとは言え、二次創作をこんな自由に販売できることはフランスと日本の大きな相違点の一つです。フランスでは、著者の権利が厳守されており、人が作った世界やキャラを勝手に再利用し、商品化することが到底許されていません。

 

裁判沙汰になることもあります。特に、名作の「TINTIN」(「タンタン」)の版権を管理している会社はその価値観を定着させてきました。

 

アメリカもそれに関しては厳しいところがあります。ディズニーキャラなどがコミケでは使用されないのも関係あるでしょう。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関する交渉の時、二次創作が課題になったそうです。しかし、結局交渉の結果、コミケは日本の漫画だけを再利用する限り、グレイゾーンのままでオッケーになりました。

 

日本では

「二次創作を作っているのはもともと作品のファンだから反対するのが難しい」

「しかも二次創作も漫画家の卵の練習になると考えれば、長い目で考えて出版業界にもメリットがある」

という声もあります。

 

一方で、フランスでは、頭と時間を使って、一生懸命作り上げたキャラを許可なく利用され、しかも販売される商品として出されることが著者の立場を根本的に弱めかねないと考えられています。私はどちらが正しいのか、ここで論じるつもりはありませんが、その価値観の違いが面白いと思います。

面白すぎて時間が足りない!

三日間も毎日ビッグサイトに足を運んで、最後の日はさすがに死にそうになりました。

それと同時に、強くなった気がします……。

 

とにかく、日本のポップカルチャーを象徴する聖地のひとつをやっと訪れて大満足です。広すぎて全てのブースをちゃんと見る時間があったわけではないですが。

 

特に、後悔しているのは、サークルを見回ることに夢中になりすぎて、コスプレイヤーがろくに見られなかったことです。今度の課題にします!

 

これからも毎回参加する予定なので、メガネかけてキョロキョロしているフランス人を見かけたら、お気軽に声をかけてみてください。きっと私です。チョコを与えてくれれば喜びます。宜しくお願いします!

 フランス

編集者キムさんによるフランス漫画コラムはこちら


 

キムです。お気軽に声をかけてください! ☺

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Ki-oon公式ウェブサイト(フランス語のみ) : http://www.ki-oon.com/

東京オフィス連絡先:

代表名:キム・ブデン

住所:c/oフランス商工会議所

    〒102-0085東京都千代田区六番町5-5 飯田ビル

メール:[email protected]

電話番号:03-6824-9596

フランス

Ki-oonの東京オフィス代表キム・ブデンについて:講談社の国際事業局で四年半働いた後一旦帰国、三年半フランスの漫画出版社・PIKAの編集長として勤め、去年の10月からKi-oonの在日オフィス代表として日本に戻り、現在に至る。

 

漫画企画を募集しています!

 

Ki-oonとの漫画制作に興味がありましたら、

・ストーリー

・世界観とキャラの設定資料

・完成したページ(最低限一話目)

をまとめ、ご送付下さい。

 

*「デビューするならフランスがアツい!日本人漫画家を育てるフランスの出版社、Ki-oonって?」