フランスの著名コミック賞にKi-oonのオリジナル作品が2点も!?日本の漫画の評価はなぜ高い?

フランスの著名コミック賞にKi-oonのオリジナル作品が2点も!?日本の漫画の評価はなぜ高い?

 

ご無沙汰しております。フランスの漫画専門出版社Ki-oonのキムです。今年の夏に嬉しいことがおきたので、皆さんとその喜びを共有したいと思います。なんと、4月にKi-oonから発売されたオリジナル作品「新しい空の下で(Sous un ciel nouveau)」が有名なフランスのバンド・デシネ協会ACBDのアジア賞を受賞しました!

 

▲「新しい空の下で  (Sous un ciel nouveau)」:亡くなった息子の夢を追い続ける老夫婦、子供のために父親役を担おうとするシングルマザー、母を助けるために女を騙す男、生死の淵に立っている教師の最後の授業… 人間の絆の大切さを感じさせてくれる短編集。


弊社のオリジナル作品がACBD アジア賞を受賞するのは2回目です。2015年に、筒井哲也氏の「有害都市 (Poison City)」も同じ賞を受賞したのです。

▲「有害都市(Poison City)」:日本語版が集英社から刊行されています):表現の自由をテーマにしたリアル系のスリラー。オリンピックを控えた日本で、新人漫画家が表現の規制に対して戦いを挑む。

 

実は、オリジナル作品が二回もこの賞を勝ち取るのは前代未聞のことです。普段は日本の出版社からライセンスされた名作しか選出されません。いったい何が起きたのでしょうか?!

 

 

ACBD とはなんですか?

ACBDは「Association des Critiques et journalistes de Bande Dessinée」、すなわちバンド・デシネ(BD)専門家の協会です。バンド・デシネはフランス独特のコミックであり、マンガと同様昔から存在しているものです。日本語版も少しずつ出るようになったので、機会があれば是非見てみてください!

 

大人向けのものだけではなく、子供向けのものもありますが、アーティスト性の強い作品が多いため、芸術として認定されています。芸術には評論家が付き物です。その評論家を集めた、一番大規模な協会がACBDです。

 

バンド・デシネに関する情報拡大を目的に1984年に創立されたこの組織は、今は100人近くの記者やBD専門家を抱えています。その宣伝活動の一貫として、ACBD賞が立ち上げられたのです。

ACBDアジア賞の誕生

当初はバンド・デシネ限定の賞しかありませんでしたが、創立時から20年立った頃に、フランスでマンガブームが起きました。無視できないほどの現象を目の前にし、2007年にACBDアジア賞が誕生しました。

バンド・デシネと同じく売れ行きよりアーティスト性を第一の基準にしています。

 

これまでに中沢啓治の「はだしのゲン」、豊田哲也の「ゴーグル」、浦沢直樹の「PLUTO」、今敏の「オーパス」、カネコアツシの「ウェットムーン」などなど、多くの日本の漫画が受賞してきました。

 

そして、「有害都市」(著:筒井哲也)と「新しい空の下で」(画:平井志 / 原作:藤井慶)以外は、どれも日本の出版社からライセンスされた作品です。


なぜ弊社の作品が二回も受賞できたのか?!弊社社長と作家さんの声を聞いてみましょう!

著者達の喜びの声と受賞の経緯

▲「有害都市」を含め、弊社とコラボし、多くのヒット作品を生み出した筒井哲也。新作の「ノイズ」の1巻が今年フランスと日本で発売されました。

▲「新しい空の下で」の原作者・藤井慶(左)と漫画家・平井志(右)

 

受賞のニュースに対し、著者の方々は驚きを隠せません。


筒井哲也:「調べてみたら、歴代素晴らしい作品が受賞している賞だとわかりました。自分も頂けたのは本当にいいのかなとちょっと後ろめたい気持ちがありましたが、とても嬉しかったです。自信満々に描いているという風に思っている人がいるかもしれませんが、いつもこれでいいのかな、皆喜んでくれるのかと不安に思いながら描いています。そんな中、一つの評価を頂けたおかげで嬉しかったです。ホッとしました。」


藤井慶:「主催者のtwitterを見守っていました。真夜中の0時を過ぎていましたが、(平井)志さんに電話して喜びを分かち合いました。」


平井志:「机でうたた寝しそうな時にメールで受賞の知らせがあり、まずは人ごとのような気持ちでした。暫くして、原作の藤井さんから電話で喜びの声を聞き、やっと実感しました。一気に目が覚め、その日は嬉しくて寝られませんでした。」

 

▲Ki-oon編集長のAhmed AGNE(アメッド・アニュ)

 

ただ運や偶然が重なり、このような結果になった訳ではありません。Ki-oon社長のAhmed AGNE(アメッド・アニュ)はこう分析します。


著者の方々のプロフィールと関係しているでしょう。最初から海外との接点がありました。平井先生はアングレーム国際漫画祭(注:フランス最大のバンド・デシネコンベンション)でフランスのコミック文化を知り、ハマったそうです。また、筒井先生の初単行本はフランスで出ました。」

 

確かに、フランスとの強い繋がりを感じます。平井志氏は19歳の時に「ブラックサッド」を初めて読み、衝撃を受けたそうです。それからは漫画ではなく、バンド・デシネを描きたいと決意したと、ご自身の気持ちを語ってくれました。

 

「影響は、絵を通して感じる物作りへの姿勢です。バンドデシネは流行りに流されることもなく、しっかりと作者自身の持ち味を表現しています。描き方も多様で、持っている全ての技量を注いでいるように感じます。絵に流行があるのは仕方がありませんが、バンド・デシネはそういう物を越えて、いつ見ても美しいと思える作品だと思います。

▲平井志がバンド・デシネに目覚めるきっかけとなった「ブラックサッド」(日本語版はユーロマンガ社を通して刊行されました)。

 

筒井哲也氏の場合は、個人ブログに掲載されていた作品「Duds Hunt」に弊社社長が一目惚れして声をかけた結果、弊社初めての青年漫画になりました

それ以来、彼の新作はヒットを連発。フランスを意識しながら描いているわけではないのに、何故そんなに人気があるのかはご自身にとっては不思議だそうです。

 

「もしかしたらひねくれているところがいいのかな(笑)。ちょっとしたアイロニーを含めたところがフランス人にマッチしているのかもしれません。

▲弊社初の青年漫画であり、筒井哲也のデビュー作の「DUDS HUNT」。

 

フランスと縁があったこと以外に、作品のテーマも大事です。「有害都市」は特別な事件から生まれ、特別な時期に発売されました。筒井哲也氏の過去の作品「マンホール」の表現の一部が長崎市に誤解され、有害図書として扱われたのです。

 

それに対し、反抗の声を上げるために生まれた作品が「有害都市」です。2015年3月にフランスで1巻が発売されましたが、そのちょうど2ヶ月前に、フランスの新聞社「Charlie Hebdo(シャルリーエブド)」がテロの被害を受けました。

 

アメッド社長が当時のムードを振り返ります「元々表現の自由と検閲問題に対してフランス人は敏感ですが、テロ事件の直後は特に話題になっていたので、『有害都市』の反響は大きかったです。

▲受賞の際に、ACBD宛に筒井哲也が描いた色紙(上)と藤井慶と平井志が作った色紙(下)

 

「新しい空の下で」の場合、そこまでドラマチックな背景があるわけではありませんが、特殊なのは著者のコンビです。原作者の藤井慶氏は小説とお笑い好きに加えて、波乱万丈な人生を送ってきました。ずっと培ってきた繊細で感動的なストーリーテリングの才能がこの作品で開花したのです。

 

ご本人曰く「お話作りでは、複雑多岐な展開はありませんが、力強く真っすぐに人の心に届く物語をつむいだつもりです。それが国や文化を超えて共感してもらえたのかなと思っています」。それを相棒の平井志氏が漫画とバンド・デシネの長所を交える形で表現しています。

▲「新しい空の下で」のキャラクター。人間性の表現が繊細で上手です。

心の支えになる賞

オリジナル作品がこのような形で評価されることは、著者の方々にとってだけではなく弊社にとっても心の支えとなっています。

 

日本の出版社が数多くの優れた作品を出しているのは確かですが、規模が違っても、弊社もまた世に注目される作品を生み出す力がある証として受け止めています。

 

一緒に組んで下さる著者と協力し合い、今後もオリジナル作品の刊行に励んでいきます!

漫画企画を募集中です!

Ki-oon公式ウェブサイト(フランス語のみ) :
http://www.ki-oon.com/
東京オフィス公式TWITTERアカウント(日本語):
https://twitter.com/Kim_Ki_oon
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<東京オフィス連絡先>

代表名:キム・ブデン

住所:〒102-0085 東京都千代田区六番町5-5 飯田ビル c/oフランス商工会議所

メール:[email protected]

電話番号:03-6824-9596
 

ジャパンエキスポ

 

Ki-oonの東京オフィス代表キム・ブデンについて:講談社の国際事業局で四年半働いた後一旦帰国、三年半フランスの漫画出版社・PIKAの編集長として勤め、2015年の10月からKi-oonの在日オフィス代表として日本に戻り、現在に至る。

 

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